riepearのブログ

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失顔症でも映画は楽しいよ。

失顔症(相貌失認)という単語を映画や漫画、小説で見かけたことがある人もいると思う。ここ最近だとBLコミックに失顔症の青年が登場していた。
実はこの病気は空想上のものでも、話の都合で作者が無理やりひねくりだしたものでもない。
顔だけが記憶できないとは、なんて都合の良い記憶障害だ!と思うかもしれないが現実私が失顔症なのだ。


人によって症状は様々だが
人の顔が覚えられない、認識できない、見えない、ぼやけて見える、感情が読み取れない...など。
重度だと、親や恋人はもちろん自身の顔も識別出来ず自らが映った鏡を他者と認識して話しかけてしまうらしい。

私はおそらく軽度~中度ぐらい。感情は読み取れているそうだ。
よっぽど親しい友人や家族や毎日会っている人以外は、過去にどんなに親しくても会う場所やメイクや髪型、服装が変わっていればその人がその人であると認識できない。また相貌失認はその他の障害と併発することがあるらしいが幸い検査の結果そうではなかった。


あれが出来ない、これが出来ないではなく失顔症であることのメリット、デメリットを「失顔症あるある」を混じえながら書き留めておこうと思う。もちろん個人差あります、私の場合はこうです。思い出した時にどんどん追加してます。

【デメリット】

・人の顔が覚えられない

ひどくアバウトだけど最大のデメリットはこれ。
場所が変わると誰か分からない、や卒業アルバムを見ても何だか他人の卒業アルバムを見ている気分になる。は大きくここに含んでおく。

・思い出に人の顔が無い

あんなことがあったなぁ....と思い出す時に、その映像の中に顔が無い。言葉にしづらいが私の場合は首から上がフレーム外のように映っていない。ぼやけているというより、そこだけ黒っぽい感じ。

・人の名前が覚えられない

これは単に記憶力や性格の問題かもしれないが、人の名前が覚えられない。顔を浮かべることが出来ないのでそれに付属する名前も出てこないのだ、と勝手に解釈している。

・映画やドラマでこれが群像劇なのか、それとも一人ひとりがしっかりと描写されているのか、分からない。

ここ最近の作品だと「ダンケルク」がこれに当たる。基本的に登場人物が少ない作品は短時間であれば覚えられる。
が、ダンケルクは登場人物が比較的多く、大半が兵士の格好で時間列や場所がバラバラだったので今の場面の青年とさっきの場面の青年が同一人物なのかそうでないのかが分からなかった。結局群像劇だったので、それらを見分ける必要はなかった....のか?

・イケメンはみんな同じに見える

よくおばちゃんが「今の若い子はみんな同じに見える」というが、私もこれに激しく同意する。特に、特徴は無いが顔の整ったイケメンもしくは美人は本当に見分けがつかない。というか、顔を捉えることが出来ない。

・アイメイクができない

アイメイク、そして眉の手入れができない。一つ一つのパーツを見ることは出来るが全体を捉えることができない。全体的にまとまりのないメイクになる。極力自分でやるが特別な日は全てプロのメイクさんにお願いする。

・たまーにどう話しても理解してもらえない時がある

一通り説明すると「それはあなたの努力不足じゃないの?」に近い言葉を言われることがある。そこに反論しようと思わない、実際毎日単語帳のように顔写真を見続ければ何か変わるかもしれないし。
小学生の時、同じクラスに『場面緘黙症』の子が居たのだけど当時理解できなかった。私や他の子が何を聞いてもだんまりを決め込むのに先生だけには話して、先生経由で意見をねじ込んでくる子だと思っていた。だから、というか、戒め?というか、理解してもらえなくても仕方ないと思っている。
だからこのブログを書いたのもなんとなくである。他者に知ってもらって何かしらしてもらおうとは思わない。へぇ~そんな奇病存在するんだね。ぐらいでいい

【メリット】

・誰に会っても新鮮な気分を味わえる

一言目から「どちら様ですか?」は失礼なので、まず相手が自分にとって目上なのか友人なのか探ることから始まる。たまに相手が誰か分からないまま愛想笑いをしつつ終わる。

・話のネタにできる

現状そこまで重症ではなく、そこまで苦労していないからこそ出来るけどこのように説明している。
「電車って鉄オタ以外からすればほとんど一緒に見えるじゃん。車の写真を片手に電車を見たり、窓枠の場所や車体の模様を暗記のように唱えながら見れば見分けは付くけど、大量の電車模型を前にいきなり一度見ただけの車体をこの中から探せっていわれても難しいじゃん?それの人の顔バージョン」(鉄オタの人ごめん)
説明できる相手も限られる。バイト仲間や私を雇う立場にある人などには説明できないが、友人はある程度仲良くなり期間が経ったら説明するようにしている。

・世間一般とイケメンの定義がずれている(気がする)

顔に特徴の無い人は覚えられないので、必然的に特徴のある顔の人が好きになる。特徴が相手のコンプレックスであることも多いので、絶対に口にはしないが。

・映画を何度も見る機会に恵まれる

登場人物の多い映画や、似た人が出る映画は決定的シーンで「実はこの人が犯人だったんですー!」などと意味有りげに登場されても「いや、お前誰だよ!!」となる。そんな時はもう一度見る。一部のシーンで出てくる人が誰なのかが自分なりに分かればいいので、既に理解しているシーンは普通に楽しめる。何度も見ると隠れていた伏線やネタに気づくことが出来る。
ただ洋画に限っては、失顔症じゃない人もこのように登場人物の見分けが付かない人が多いらしい。
https://matome.naver.jp/m/odai/2148078468277166101

・俳優、女優が演じる役にイメージが固定されない

この人といえばこの役、これ以外はイメージが沸かない。なんてことはあまりない。たまにあるけど。

・嫌なことがあった相手でも普通に接することができる

相手が◯◯さんであるということは分かっても、数ヶ月前に嫌なことを言われたもしくは怒られた相手であることは分からないので(よっぽど嫌な気持ちになって相手の名前や場所を覚えていない限り)、普通に接してしまう。

・友人の顔写真が大量にある。

なるベく人の集まる場所では写真を取るようにしている。グーグルのフォトという自動で顔を識別し、人物ごとにフォルダ分けしてくれる救世主のようなアプリがある。これがかなり高性能で、何十人と集まった集合写真や横顔だけ映った人も識別してくれる。今日会う相手が誰か事前に分かっていればそのフォルダを見てから待ち合わせをする。相手にただ見つけてもらう待ち合わせを避けられるし、思い出話もぎくしゃくしない。

・自撮り依存にならずに済む

綺麗に加工された顔の写真に価値を感じない。一応リアルの友人用のアカウントも所持しているがTLに流れる顔写真はみんな同じで怖い。みんな素の顔の方がずっと可愛いけどなぁ。。あ、でもここ最近ツイッターに追加された「この写真には◯◯さんが写ってます」みたいな機能めっちゃ便利です。
でも少しでも可愛く写りたいって気持ちは分かるし、どう言っても角が立つので口にはしない。でも友人と集まると始まる自撮り&加工&インスタアップ大会は苦手

・毎日がクイズ大会

[問題] 「十数メートル前から、私の名を呼びながら歩いてくる彼女は誰でしょう?」
ヒント...『髪は茶髪でショート、声はハスキーめ、スマホケースの色は特徴的なチェック、私をあだ名で呼ぶ間柄ではない、場所は駅前、オルチャンファッション』
[私が出した答え]「バイト先の隣の店舗の女の子」
[答え]「地元の塾に通ってた時の友人」

数秒彼女を凝視して固まっていたら、向こうから「えー覚えてないのー?◯◯だよー!」と名乗ってくれたので思い出せた。この後の「めっちゃ綺麗になったね!大人っぽくなったー!結構変わってて誰かと思ったよー」は数年ぶりに会う友人への常套句です。
小中高現在と友人に恵まれたので、私の顔覚えが異様に悪いことに対して何か陰口や嫌味などを言う子はいなかったけど、女の子って誰かに間違われたり忘れられてたりすることに敏感な気がするので、同年代の女の子への接し方は年上の目上の人並みに気を使う。




出来ないことは極論「顔が覚えられない」だけなので、なるべくメリットを書き出してみた。メリットと言いながらほぼ愚痴と化している気がする。本当は映画に関することをメインに書きたかった。


あと自分では障害や病気だとはそこまで思っていない。表現するのが難しいが、自分ではどうすることも出来ない気質や個性の1つだと思っている。
そしてグーグルの顔認証システムが眼鏡などのウェアラブルに搭載される日もそう遠くないだろう。そうなればなんら健常者と変わらない。というか記憶力が衰える前にメガネ型ウェアラブルが当たり前の世の中にならないと困る


医師から失顔症だと告げられた時はさすがにショックだったが、自らが失顔症だと自覚することでそれなりに対策が取れている。何よりも「他の人は人の顔を覚えられる」「努力してどうにかなるものではない」ということがしっかりと理解できた。人の覚えが悪いことで起きるトラブルも随分と減った。



私は偶然この病名をある小説で目にしたことで失顔症の存在を知り、最終的に自らも失顔症であると分かったが一般的には自覚できないものだと思う。
ただ失顔症の人は2%の割合で存在する。50人いれば1人は失顔症なのだからクラスに1人はいるかいないかぐらい。
ネット上に失顔症のテストは多数あるので、「私以外の人ってみんな顔覚えが良すぎじゃない?」って思ったことがある人は是非試してほしい。「天然な人」の範囲であればいいが、中度重度ならば自覚しておいた方が圧倒的に楽だと私は思うので。